長年存続している企業は、常に自社のビジネスモデルを見直し、新たな戦略を描き、それを推進しています。日々変化する経営環境に如何に適応するかを考えて経営している訳です。
「新しい付加価値源を求めて、自社をイノベーションする」これは中小建設業にも重要な経営の取組みあり、常に構想をしておく必要があります。
ここでは、中小建設業において考えられる新戦略の選択肢をいくつか見ておきましょう。
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同業態エリア展開モデル
これは今と同じ事業で、エリアを展開する事により成長経営を実現するという戦略です。
今と同じ事業ですから、営業ノウハウや設計・施工ノウハウ、経営管理システムなど、保有資源が活かせる戦略です。
同業態エリア展開モデルは、自らが人材を雇用し、営業拠点を新設していく方法もありますが、
昨今では事業譲渡をしたい同業者も増えていますので、M&Aによるエリア展開も一つの選択であると言えます。
市場特化モデル
これは、得意な施工分野に絞って成長経営を実現する戦略です。これも強みが活かせるという点で面白い選択肢です。また独自性が活かせる分、高収益な経営が実現できる可能性があります。
例えば、医療機関特化建設業、無菌工場専門建設業など、現在でも市場を特化して高収益な経営をしている建設業が存在しています。
市場特化は、顧客構造や施工分野が特定されますので、依存度の高い顧客構造にマイナス材料が発生した場合は、収益が悪化する可能性がありますので、市場の存在と成長性などを考え、永続性のある分野を選択されるべきでしょう。
ストック市場モデル
官需においては、インフラの耐久度UPの為の調査や補修の需要は伸びています。
民需においても耐震施工やリフォーム・リノベーション、既存施設の用途転換(例えば古民家の商業施設化)の需要は伸びています。
新設・新築とは異なる、診断技術・設計技術・施工技術を磨き、ストック市場における存在感を高め、シェアを高めるのも一つの選択肢でしょう。
国土強靭化モデル
日本は災害の多い国ですから、国策として継続的に国土強靭化に取り組む事になります。官需・民需ともに災害に強い構造物や建築物に投資する事は間違いないと思います。
その分野の企画・設計や施工に強みを蓄積して、選ばれる建設業になるのも一つの選択肢でしょう。
元請化モデル
これは、下請企業が元請化するモデルで比較的多くの取組みが見られます。しかし、下請企業の元請化で成功する例が多くないのも事実です。
その要因は、下請とは異なる経営資源を意識して獲得できていなかった事に起因するケースが多く見られます。
例えば、専門工種である屋根工事を下請けしていた企業が元請化するには、「見込客発掘のマーケティング手法」「お試し利用しやすいサービス企画」「リフォームに求められる診断・積算技法」「施主を対象とした商談手法」「消費者の目に触れやすい現場でのマナー」「リピートを意図した永続的な顧客管理手法」等など、下請けの時にはあまり必要なかった経営ノウハウが必要になります。
元請を目指す下請建設業は、このような元請化に必要な経営ノウハウをリスト化し、一つずつ獲得していかなければ成功しないのも現実です。
これらの選択肢は、建設業界の中で「どの市場を狙い他社と差別化していくか」という範疇の戦略です。
これらの他、「基礎工事会社が鉄筋製造業を兼業、同業他社にも販売」「内装工事会社が足場商品を開発して製造業にシフト」「自社で開発した業務管理システムを同業者に販売」といったように、建設業の隣接市場に進出して高収益型・成長経営を実現しているケースも見られます。