原価高騰・賃上げ時代の「経営再設計」を考える

変化する経営環境に適応するには、現事業の経営のあり方を再設計する必要があると思います。
その方向性について考えてみましょう。

工事利益を最大化する凡事徹底

これは、見積前の積算最適化・適性金額での見積書提示、実行予算、原価管理という工事利益を確保する当たり前の活動です。
これは環境変化に適応する最低条件だと思います。

現場で忙しい建設業では、わかっているけどなかなか実践できてないケースを多く見てきました。
従来はこの凡事徹底で黒字拡大が実現してきましたが、原材料費の高騰・賃上げの環境下では「最低限のマネジメント」という位置づけになりました。

詳細については別に掲載していますのでお読みください。

顧客構造を見直す

上記の凡事徹底をして、見積書を提示しても、値引きを要請されたり、まったく聞く耳を持ってくれない顧客の場合はどうでしょうか?
その顧客に受注を依存するのは如何なものでしょうか?

適正な価格を受け入れてくれる顧客を頑張って開拓し、適正な顧客構造を作る事が大変重要な活動になってきました。

顧客も良い施工をしてくれる建設会社を捜しています。
これまでも多くの企業で顧客構造を見直し頑張って営業して頂き、高収益化したケースは多くあります。

重点工事分野を見直す

これまでに多くの建設業の工事分野別の工事利益の分析をしてきました。

例えば、500万円規模の工事は儲かっているのに、たまたま受注できた3000万円の工事で大きな赤字を出してしまった。
得意な工種は儲かっているのに、不得意な工種を受注した結果、赤字になってしまった。
このようなケースを多く見てきました。

建設業には、施工技術・マネジメント力・外注先の特性などで、「儲かる工事分野」があります。
その儲かる工事分野を増やす事に注力して頂く事も大変重要です。

施工エリアを見直す

残業規制や割増率UPの環境を踏まえると、現場までの移動時間が多くかかる遠方工事は採算がとりにくくなります。

これは大変難しいテーマですが、上記の顧客構造の見直しとか、下請メインの場合は近隣の元請工事を頑張って増やすなど、戦略的に取組む事も必要になる可能性があります。

あらゆる手段で、休日日数増加・残業削減を考える

このテーマは中小建設業にとって最も難しいテーマです。

地域や工種・業態、事業規模などで切り口和変わりますし、申し訳ないのですが私共もまだ十分な対策イメージが確立できている訳ではありません。
ここでは参考までにいくつかの建設業さんとブレーンストーミングで話し合っている対策を例示しておきます。

【参考】 休日日数増加・残業削減のブレーンストーミング結果

●現場への移動時間、管理のための移動時間を減らす
 ❑現場管理クラウドで施工管理者の移動時間を減らす  
 (意思疎通の時間も削減できる)
 ❑戦略的に近場の工事を受託する受注構造をつくる
 ❑地域での元請受注を増やす
 ❑遠方で現場の多い地域に事業所を設ける
●着工・竣工前後の過負荷を減らす
 ❑社内スタッフに事務作業を移管し助けてもらう
 ❑集中する時期の業務の外注先を確保する
 ❑派遣会社を活用する
●繁閑差を減らす営業活動
 ❑閑散期の受注促進
 (少し利益が薄くても稼働で経常利益UP)
 ❑繁忙期の山崩し
 (生産性改善・工期交渉)

●地域の同業者との助け合い
 ❑同業種組合の仲間と稼働情報を共有し受発注しあう
 ❑現場で一緒の企業と稼働情報を共有し受発注しあう
●外注先さんとの業務分担の話し合い
 ❑休日の取り方を話し合い、曜日や日にちを組み立てる
 ❑労働時間帯を話し合いお互いの労働時間を削減する
●外国人労働者の確保
 ❑募集ルートを確保する
 ❑日本語教育の良い業者と提携する
 ❑事務スタッフで日本語教育ができる体制をつくる

建設業はまだまだ市場のある素晴らしい業界です。

しかし今、建設業はかつてないコストアップの経営環境にあり、それを価格転嫁できるまでには一定期間を要する可能性もあります。
既存事業のビジネスモデルを再度見直し、コストアップに耐えうるように「経営再設計」をし、今後の「財務再設計」をしてこの時期を乗り切って頂きたいと思います。