経営環境の激変下において経営再設計を考える

今、中小建設業を取り巻く経営環境が激変し、新しい時代の経営のあり方が問われています。ここでは、重要な環境変化を確認し、経営再設計の重要性を考えます。

長く続く原価高騰トレンド

新型コロナの感染拡大は「原材料の供給混乱・価格高騰」など大きな混乱をもたらしました。ロシアのウクライナ侵攻は「エネルギー資源・材料費の高騰」をもたらしました。この2つの大事件が収束した後も、エネルギー高騰や材料費高騰は続くと指摘されています。それは、西欧が権威主義国家へのサプライチェーン依存度が高すぎると問題発生時のリスクが大きいと考え、比較的コストが高い西欧寄りの国のサプライチェーンの再構築に動いているからです。これは中小建設業の原材料費・燃料費の高騰が長く続く可能性を示唆しています。

国策としての賃上げ

昨今の物価高騰を背景に、国策としての人件費UPが打ち出されました。それに大手企業も同調し賃上げを断行しています。中小企業においてもその流れが始まり、これから賃上げが本格化すると思われます。まだ多くの中小企業が、「価格転嫁ができない状況にあり賃上げは難しい」と考えているようにお聞きします。
しかし、中小建設業でもこの流れに対応できないと、「人材採用」ができないばかりでなく「人材流出」につながる可能性もあります。これは中小建設業の死活問題であり人件費高が長く続く事を示唆しています。

2024年からの残業規制適用

残業規制の適用は中小建設業にとって大きな問題です。これは本来業界全体で改善しなければならない問題だと考えます。繁忙期・閑散期の波を解消するための発注者の変革、無理な工期設定の改善等々。
しかし、それを待っていては問題は解消されず中小建設業にしわ寄せがくるだけです。残業が制限されるという事は、人材の投入を増やしたり、外注先への依存度を高めたり、移動時間削減を意図した営業エリアの見直しを迫られたりと、様々な経費高につながる可能性があります。労働時間の制限からせっかくの案件を受注できないという最悪の事態も想定されます。

経営再設計の重要性について

これらの経営環境の変化は、中小建設業の収益構造に重要な影響を及ぼします。従来よりも材料費は高まり、人件費も高くなり、外注依存度が高まり、現在の経営モデルでは恐らく低収益化・赤字拡大をもたらす事でしょう。3%5%程度の経常利益は消滅してしまう可能性を秘めています。今、環境に適応するための、「新しい財務モデル」とそれを実現する「経営モデルの再設計」が大変重要です。

材料費高騰に関しては、国交省も発注者や元請企業に対して適正な発注金額を促す動きをしていますし、今後もそうするでしょう。賃上げに関しては政府も価格転嫁促進に向けた政策を打ち出す可能性があります。

しかし、元請・一次下請け・二次下請けと商談が進むうちに、無理難題を言われる事も続くと思います。それを飲み込んで赤字受注をするようでは低収益化又は赤字拡大の要因となります。言い値でとりあえず受注するとか、概算見積で受注するというのはリスクがあります。適正な価格交渉ができるよう積算を徹底して根拠のある見積金額で商談する事が不可欠です。適正な取引をしてくれる顧客構造を作るための営業活動も不可欠でしょう。遠方工事が多い建設業では、営業・施工エリアの見直しとそれを受注できる構造づくりが必要かもしれません。

もう一度、現在の財務(決算書)の中身を確認し、今後どのような財務を実現するのか、その為の経営再設計はどのようにあるべきかを考える時期に来ています。